概要: 本記事では、Gradle 10のロードマップとリリース時期の予測を、公式情報を基に解説します。あわせて、現行のGradle 9系(9.0から9.6)のリリース履歴と各バージョンの主な変更点を整理し、次期メジャーバージョンへ向けた移行準備のポイントを紹介します。
Gradle 10のロードマップ:リリース時期と予定されている変更点
リリース時期は「2026年目標」—ただし正式な日付は未発表
Gradle 10のリリース時期について、公式ブログでは「2026年を目標」と明言されています。具体的な日付は2026年8月14日時点で正式発表されていません。サードパーティの見立てでは「2026年第4四半期または2027年第1四半期」という予想もありますが、これはGradle公式の発表ではないため、記事で断定することは避けるべきです。現時点では「2026年を目標に開発が進んでいる」という理解が正確です。Gradleは約6週間ごとにリリースを行うロール式モデルを採用しており、9.x系の最新マイナーが順次公開されています。9.6.1が2026年6月にリリースされていることから、9.x系の開発が進行中であることが確認できます。
Configuration Cacheのデフォルト化が最大のテーマ
Gradle 10で最も注目される変更点は、Configuration Cacheのデフォルト有効化です。Configuration Cacheとは、ビルド設定の解析結果をキャッシュして再利用する仕組みで、ビルド高速化に寄与します。Gradle 9.0.0で「推奨実行モード」に昇格しましたが、デフォルトでは有効になっていません。公式ブログでは「Gradle 10でConfiguration Cacheをデフォルトで有効化する目標」が明言されています。また、gradle initで新規生成するプロジェクトはGradle 9時点でConfiguration Cacheがデフォルト有効となっており、段階的に移行が進んでいます。
Isolated ProjectsとProvider API移行の完了を目指す
Gradle 10ではIsolated Projects(分離プロジェクト)の本格化も見込まれています。Isolated Projectsは、各プロジェクトを独立して設定・実行できるようにする仕組みで、Configuration Cacheを前提とした機能です。Gradle 9.0.0時点ではpre-alpha段階で、9.x系のいずれかでIncubatingに昇格する予定とされています。また、Provider APIへの移行完了もGradle 10の目標として公式ブログに記載されています。Provider APIはGradleの遅延評価を支える仕組みで、ビルドスクリプトのパフォーマンスと正確性を向上させます。さらに、9.6でソフトウェアモデル関連の142個のパブリック型が非推奨化され、Gradle 10での削除が予定されています。
要点:Gradle 10は2026年を目標に開発中で、Configuration Cacheのデフォルト化、Isolated Projectsの進展、Provider API移行完了、非推奨APIの削除が主な変更点です。正確なリリース日は未発表です。
Gradle 9系のリリース履歴:9.0から9.6までの歩みを振り返る
9.0.0は2025年7月に登場したメジャーリリース
Gradle 9.0.0は2025年7月31日にリリースされたメジャーリリースです。このバージョンからセマンティック・バージョニング(SemVer)が導入され、バージョン表記が従来の2桁(例:8.5)から3桁(例:9.0.0)に変更されました。主な変更点として、Java 17がGradle本体の最低実行要件となり、Kotlin 2.2.xの同梱、Groovy 3.0から4.0へのメジャーアップグレードが行われています。また、再現可能なアーカイブ(Jar/War/Zip/Tar/Earなど)がデフォルトで有効になり、ビルドの再現性が向上しました。
9.1から9.6までのリリース日と主なトピック
9.1.0は2025年9月18日、9.2.0は2025年10月29日、9.3.0は2026年1月16日、9.4.0は2026年3月4日、9.5.0は2026年4月28日、9.6.0は2026年6月18日にリリースされました。9.4.0ではJava 26のサポートが追加されました。9.6.0ではソフトウェアモデル関連の142個のパブリック型が非推奨化され、Gradle 10での削除予定が示されています。各バージョンにはパッチリリースも存在し、9.2.1(2025年11月17日)、9.3.1(2026年1月29日)、9.4.1(2026年3月19日)、9.5.1(2026年5月12日)、9.6.1(2026年6月26日)が公開されています。
現行最新安定版は9.6.1
2026年8月14日時点の最新安定版はGradle 9.6.1です。これは9.6.0の最初のパッチリリースとして2026年6月26日に公開されました。Gradle公式User Manualの現行バージョンも9.6.1となっており、公式は9.6.1へのアップグレードを推奨しています。9.6.1ではConfiguration Cacheの改善、CLIやHTMLテストレポートの改善などが行われています。Gradleは新リリースを約6週間ごとに公開しており、各メジャーラインの最新マイナーのみがフルサポート対象となります。9.x系の開発は継続しており、記事公開時にはさらに新しいバージョンがリリースされている可能性があります。
要点:Gradle 9系は2025年7月の9.0.0から始まり、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6と順調にリリースされています。2026年8月時点の最新版は9.6.1です。
Gradle 10の方向性:Configuration Cacheのデフォルト化とAPI移行
Configuration Cacheとは何か
Configuration Cacheは、ビルド設定の解析結果をキャッシュして再利用する仕組みです。通常、Gradleはビルドのたびに各プロジェクトの設定フェーズを実行しますが、Configuration Cacheを使うと、変更がない限り設定フェーズをスキップできます。これにより、特に多数のプロジェクトや複雑なビルド構成を持つプロジェクトでビルド時間の短縮が期待できます。Gradle 9.0.0で「推奨実行モード」に昇格し、gradle initで新規作成するプロジェクトではデフォルトで有効になっています。ただし、既存プロジェクトでは手動で有効化する必要があります。
Gradle 10でデフォルト化—何が変わるのか
Gradle 10ではConfiguration Cacheがデフォルトで有効化される目標が公式に示されています。これが実現すると、開発者は明示的に設定しなくても高速なビルドの恩恵を受けられるようになります。一方で、Configuration Cacheと互換性のないプラグインやビルドスクリプトを使用しているプロジェクトでは、移行が必要になる可能性があります。Gradle 9では、CLIが非互換機能を検出しない場合に有効化を推奨するメッセージを表示する仕組みが導入されており、段階的な移行が促されています。9.1.0ではCI向けの読み取り専用モードも追加されました。
Provider API移行と非推奨APIの削除
Gradle 10ではProvider APIへの移行完了が目標とされています。Provider APIはGradleの遅延評価を支える仕組みで、ビルドスクリプトのパフォーマンスと正確性を向上させます。当初はGradle 9で移行完了予定でしたが、2025年3月28日の決定によりGradle 10に延期されました。また、Gradle 9.6でソフトウェアモデル関連の142個のパブリック型が@Deprecatedアノテーション付与され、Gradle 10での削除が予定されています。対象にはorg.gradle.model.*やC/C++、Swift系プラグインが含まれ、cpp-applicationやswift-applicationなどへの移行が推奨されています。
要点:Gradle 10はConfiguration Cacheのデフォルト化を中心に、Provider API移行の完了と非推奨APIの削除を目指しています。互換性のないプロジェクトは早めの移行準備が必要です。
Gradle 9系の主な変更点:Java 26サポートと非推奨化の流れ
Javaバージョン対応の拡大—Java 17からJava 26まで
Gradle 9系ではJavaバージョン対応が大幅に拡大しました。9.0.0ではGradle本体の実行にJDK 17以上が必要になりました。9.1.0でJava 25のフルサポート追加、9.4.0でJava 26のサポートが追加されています。これにより、2026年8月時点の互換性表ではJava 17〜26をGradleの実行環境としてサポートしています。JavaのバージョンとGradleのバージョンは別物であり、Java 26でGradleを実行するには9.4.0以降、Java 21なら8.5以降が必要です。Java Toolchainsを使えば、Gradleを実行するJDKとプロジェクトのコンパイル・テストに使用するJava環境を分離できます。
KotlinとGroovyのメジャーアップグレード
Gradle 9.0.0では、ビルドスクリプトで使用される言語にも大きな変更がありました。Kotlin 2.2.xが同梱され、Kotlin言語バージョン2.2へ移行しました。Gradle 8.xではKotlin 2.0同梱・言語バージョン1.8でした。また、Groovyが3.0から4.0へメジャーアップグレードされました。Kotlin DSLとGroovy DSLの両方で、新バージョンの言語機能が利用可能になっています。さらに、JSpecifyヌル性アノテーションがGradle APIに採用され、従来のJSR-305から変更されました。これはKotlinベースのビルドスクリプトやプラグインのバイナリAPIに影響を与えるため、プラグイン開発者は注意が必要です。
非推奨化と削除—9.0.0で削除されたAPIとGradle 10での削除予定
Gradle 9.0.0では、いくつかの非推奨APIが削除されました。代表的なものとして、Project.exec(Closure)とProject.javaexec(Closure)が削除され、ExecOperations.exec(Action)への置換が必要になりました。また、Project.buildDirが削除され、Project.layout.buildDirectoryへの置換が求められます。さらに、Gradle 9.6.0ではソフトウェアモデル関連の142個のパブリック型が非推奨化され、Gradle 10での削除が予定されています。非コンシューマブルConfigurationの消費やプロジェクト横断のConfiguration拡張はエラー化され、より厳格なAPI管理が進んでいます。
要点:Gradle 9系はJava 26までのサポート拡大、Kotlin 2.2とGroovy 4.0への移行、非推奨APIの段階的削除が進んでいます。Gradle 10に向けてAPIの整理が加速しています。
Gradle 10へ向けた移行準備:現行9系での確認ポイント
Configuration Cacheの互換性を確認する
Gradle 10でConfiguration Cacheがデフォルト化されるため、現行の9系で互換性を確認しておくことが重要です。まず、Gradle 9.6.1でConfiguration Cacheを有効化してビルドを実行し、問題がないか確認します。Gradle 9ではCLIが非互換機能を検出しない場合、有効化を推奨するメッセージを表示します。非互換のプラグインやビルドスクリプトがある場合は、それらがConfiguration Cacheに対応しているか、代替手段があるかを確認する必要があります。gradle initで新規作成したプロジェクトはすでに有効化されているため、既存プロジェクトでの手動確認が中心になります。
Java実行環境とToolchainの設定を見直す
Gradle本体の実行にはJDK 17以上が必要です。Gradle 10ではJava 21が最低実行要件になるという予想もありますが、公式確認はされていません。現行の9系では、JDKバージョンとGradleバージョンの互換性を確認することが重要です。Java 26でGradleを実行する場合は9.4.0以降が必要です。また、Java Toolchainsを使用することで、Gradleを実行するJDKとプロジェクトのコンパイル・テストに使用するJava環境を分離できます。これにより、プロジェクトが異なるJavaバージョンを対象とする場合でも、柔軟に対応できます。Gradle Wrapperを使用していれば、プロジェクトごとにGradleバージョンを固定できます。
非推奨APIの使用状況をチェックする
Gradle 10で削除予定のAPIを使用していないか、現行の9系で確認しておくことが推奨されます。特に、Gradle 9.6で非推奨化されたソフトウェアモデル関連の142個のパブリック型に注意が必要です。対象にはorg.gradle.model.*やC/C++、Swift系プラグインが含まれます。これらのAPIを使用している場合は、cpp-applicationやswift-applicationなどへの移行を検討する必要があります。また、9.0.0で削除されたProject.exec(Closure)やProject.buildDirなどの代替APIへの移行が完了しているかも確認します。ビルドスクリプトやカスタムプラグインのコードを監査し、非推奨警告が出ていないか確認することが重要です。
要点:Gradle 10への移行準備として、Configuration Cacheの互換性確認、Java実行環境とToolchainの見直し、非推奨APIの使用状況チェックの3点を現行9系で進めることが推奨されます。
参考出典
- Gradle公式「Gradle User Manual」(2026年8月確認)
- Gradle公式「Gradle 9.6.1 Release Notes」(2026年6月26日)
- Gradle公式「Compatibility Matrix」(2026年8月確認)
- Gradle公式「Gradle 9.0.0 Release Notes」(2025年7月31日)
- Gradle公式「Gradle 9.4.0 Release Notes」(2026年3月4日)
- Gradle公式「What’s new in Gradle 9」
- Gradle公式ブログ「State of the Configuration Cache – On the Road to Gradle 9」
- Gradle公式「Releases」ページ
まとめ
よくある質問
Q: Gradle 10のリリース時期はいつですか?
A: Gradle 10の正確なリリース日は現時点で公式発表されていません。Gradle 9.0.0の公式ブログでは「2026年を目標」と明言されていますが、決定事項ではないため、今後の公式発表を確認する必要があります。
Q: Gradle 10で予定されている主な変更点は何ですか?
A: 公式ブログなどで言及されている主な変更点としては、Configuration Cacheのデフォルト有効化、Provider APIの移行完了が挙げられます。また、ソフトウェアモデルのAPI群がGradle 10で削除予定として非推奨化されています。
Q: Gradle 9系の最新バージョンはどれですか?
A: 2026年8月時点の最新安定版はGradle 9.6.1です。2026年6月26日にリリースされたパッチリリースで、Gradle公式のUser Manualも9.6.1を現行バージョンとして参照しています。
Q: Gradle 9.4.0以降で追加されたサポートは何ですか?
A: Gradle 9.4.0でJava 26のサポートが追加されました。Gradle本体をJava 26で実行するにはGradle 9.4.0以降が必要です。
Q: Gradle 10へ向けて、現行の9系で何を確認すべきですか?
A: プロジェクトで使用しているGradle Wrapperのバージョンと、実行環境のJDKバージョンを確認し、Gradle 9系の最新バージョンへアップグレードすることを検討しましょう。その際、Configuration Cacheの対応状況や、非推奨APIを使用していないかを確認することが重要です。
