1. SQL主要句・関数の全体像と学習ロードマップ
    1. SQLがビジネスの新たな武器となる理由
    2. SQL学習のステップと推奨リソース
    3. SQLスキル習得で開かれるキャリアパス
  2. 目的別!SQL句・関数の基本的な記述と活用ステップ
    1. データ抽出の基本:SELECT句とFROM句
    2. 条件抽出と並べ替え:WHERE句とORDER BY句
    3. データの集計とグループ化:GROUP BY句と集計関数
  3. データ連携から集計まで!実践的なSQLクエリ活用事例
    1. 複数のテーブルを結合するJOINの基本と種類
    2. サブクエリとWITH句(共通テーブル式)で複雑なクエリを整理する
    3. ケーススタディ:マーケティング分析におけるSQL活用
  4. SQLクエリ作成で陥りやすい落とし穴と回避策
    1. パフォーマンス低下を招くクエリの問題点
    2. データの整合性に関わる注意点
    3. SQL方言とベンダー固有機能への対応
  5. 【ケース】複雑なデータ結合によるパフォーマンス課題の解決
    1. 架空のケース:大規模ECサイトでの顧客分析レポート遅延
    2. 課題解決のためのSQLクエリ改善戦略
  6. まとめ
  7. よくある質問
    1. Q: SQLにおけるAS句の主な用途は何ですか?
    2. Q: IN句とEXISTS句の使い分けのポイントは何でしょう?
    3. Q: JOINの種類とそれぞれの適切な利用シーンを教えてください。
    4. Q: SQLでの複数テーブルからのデータ取得方法は?
    5. Q: LAG関数はどのような場合に活用されますか?

SQL主要句・関数の全体像と学習ロードマップ

SQLがビジネスの新たな武器となる理由

現代ビジネスではデータに基づいた意思決定が不可欠であり、その中心にあるのがSQLです。かつては専門エンジニアの領域と見なされがちでしたが、現在では営業、マーケティング、経営企画など、あらゆる職種のビジネスパーソンにとって必須のスキルへと変化しています。2024年のStack Overflow Developer Surveyによると、全プロフェッショナル開発者の約52%が実務でSQLを使用しており、その重要性が数字からも裏付けられています。SQLを習得することで、自身の業務データを直接操作し、分析することで、より迅速かつ的確な意思決定を下すことが可能になります。

SQLは非手続き型言語という特性を持つため、プログラミング経験がない方でも比較的スムーズに学習を進めやすいという利点があります。処理の「手順」を詳細に記述するのではなく、「どのようなデータを取得したいか」という結果の条件を指定するだけで良いため、初心者でもデータ操作の論理を理解しやすい構造になっています。これにより、データ活用のハードルが下がり、職種を問わず多くの人がデータドリブンなアプローチを業務に取り入れやすくなっています。

データ活用能力は企業競争力の源泉であり、SQLスキルは個人の市場価値を高める強力なツールとなるでしょう。

SQL学習のステップと推奨リソース

SQL学習の第一歩は、データの抽出・加工の基本となる主要な句(SELECT, FROM, WHERE, GROUP BY, JOINなど)を体系的に理解することです。まずは基本的なSELECT文から始め、次に条件を指定するWHERE句、データを結合するJOIN句へと順に進めることを推奨します。これらの基礎を固めることで、複雑なデータ分析の基盤が築かれます。多くのオンライン学習プラットフォーム(例: Udemy, Progate, ドットインストールなど)や、各データベースベンダーが提供する公式ドキュメントは、豊富な学習リソースを提供しています。

次に、実際に手を動かす演習を繰り返すことが重要です。小さなデータベースを作成し、様々なクエリを試行錯誤することで、理論だけでは得られない実践的なスキルが身につきます。例えば、架空の売上データや顧客データを準備し、「特定期間の売上上位10商品」「特定の地域に住む顧客の平均購入金額」といった具体的な問いを設定してクエリを作成してみましょう。エラーから学び、効率的なクエリの書き方を体得することが上達への近道です。

さらに、Window関数やサブクエリ、共通テーブル式(CTE: WITH句)といった応用的な機能を習得することで、より複雑なデータ分析やレポート作成に対応できるようになります。これらのスキルは、単なるデータ抽出に留まらず、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールでのデータ準備や、データウェアハウスでのデータ加工など、高度なデータ活用シーンで役立ちます。

SQLスキル習得で開かれるキャリアパス

SQLスキルは、個人のキャリアアップに大きく貢献する可能性を秘めています。国税庁の令和4年分民間給与実態統計調査によると、給与所得者全体の平均給与が458万円であるのに対し、SQLを専門とするデータエンジニアやデータアナリストは、一般的にそれ以上の高水準な給与を得ている傾向にあります。これは、データ活用の専門家としての需要の高さと希少性を反映していると言えるでしょう。SQLを習得することで、データに基づいた課題解決能力が向上し、企業内での評価を高めることが期待されます。

政府もデジタル人材の育成に力を入れており、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議の資料によると、2024年度にはデジタル分野の公共職業訓練等受講者数として年間約70,000人の育成が目標として掲げられています。このことからも、SQLを含むデジタルスキルへの社会的なニーズが非常に高いことが分かります。SQLスキルは、データアナリスト、ビジネスインテリジェンスエンジニア、データサイエンティスト、データベース管理者(DBA)といった専門職への道を開くだけでなく、マーケターや営業担当者など、既存の職種においてもデータドリブンな意思決定を推進するための強力な武器となります。

また、フリーランスとしての独立や、副業でのデータ分析案件の受注など、多様な働き方の選択肢も広がります。データの収集、加工、分析、可視化までを一貫して行えるスキルは、様々な業界・企業で求められるため、市場価値の高い人材として活躍できる可能性が高まります。

チェックリスト

  • SQLの基本構文(SELECT, FROM, WHEREなど)を理解しましたか?
  • JOINを使った複数テーブルのデータ結合を試しましたか?
  • 集計関数(SUM, COUNT, AVGなど)とGROUP BY句を使いましたか?
  • サブクエリやWITH句で複雑なクエリを作成しましたか?
  • 自身の業務データや公開データを使って実践的な分析を試しましたか?

出典:Stack Overflow Developer Survey 2024, 令和4年分 民間給与実態統計調査(国税庁), デジタル人材の育成・確保に向けて(内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議)

目的別!SQL句・関数の基本的な記述と活用ステップ

データ抽出の基本:SELECT句とFROM句

SQLでデータを取り扱う上で最も基本となるのが、SELECT句とFROM句です。SELECT句は「どの列(カラム)のデータを取得するか」を指定し、FROM句は「どのテーブルからデータを取得するか」を定義します。例えば、「顧客テーブルから顧客IDと顧客名を取得したい」場合は、SELECT 顧客ID, 顧客名 FROM 顧客テーブル;のように記述します。全ての列を取得したい場合はアスタリスク(*)を使用しますが、パフォーマンスや可読性の観点から、必要な列だけを指定することが一般的に推奨されます。

取得する列名が長く、クエリの可読性が低下する場合や、複数のテーブルから同じ列名を取得する場合などには、エイリアス(別名)を設定すると便利です。SELECT 顧客ID AS ID, 顧客名 AS 名前 FROM 顧客テーブル;のように「AS」キーワードを使って一時的な別名を付与できます。また、取得したデータに重複する行がある場合、SELECT DISTINCT 地域 FROM 顧客テーブル;のようにDISTINCTキーワードをSELECT句の直後に置くことで、重複しない一意の値だけを抽出することができます。これは、例えば「顧客が存在する地域の一覧」を知りたい場合に有効です。

これらの基本構文をマスターすることは、どのような複雑なクエリを作成する上でも不可欠です。まずは簡単なテーブルを作成し、様々な列の組み合わせやエイリアスの設定、DISTINCT句の効果を試しながら、SQLの基本動作を体感してみてください。

条件抽出と並べ替え:WHERE句とORDER BY句

取得するデータを特定の条件で絞り込みたい場合はWHERE句を使用します。WHERE句はFROM句の直後に記述し、比較演算子(=, <>, >, <, >=, <=)や論理演算子(AND, OR, NOT)を組み合わせて柔軟な条件を指定できます。例えば、「売上が1000円以上の商品を抽出する」場合はSELECT * FROM 商品テーブル WHERE 売上 >= 1000;となります。文字列の部分一致検索にはLIKE句(例: WHERE 商品名 LIKE 'PC%';)、複数の値のいずれかに一致する条件にはIN句(例: WHERE 地域 IN ('東京', '大阪');)、数値範囲を指定する場合にはBETWEEN句(例: WHERE 価格 BETWEEN 1000 AND 5000;)が非常に役立ちます。

データの並べ替えにはORDER BY句を使用します。ORDER BY句はクエリの最後に記述し、指定した列の値を基準にデータを昇順(ASC、デフォルト)または降順(DESC)に並べ替えることができます。例えば、「売上が高い順に商品を表示する」場合はSELECT 商品名, 売上 FROM 商品テーブル ORDER BY 売上 DESC;となります。複数の列を並べ替えの基準として指定することも可能です(例: ORDER BY 地域 ASC, 売上 DESC;)。これにより、まず地域で昇順に並べ、同じ地域内では売上が高い順に並べるといった、多段階のソートが実現できます。

WHERE句とORDER BY句を組み合わせることで、特定の条件を満たすデータを効率的に抽出し、見やすい形式で整形することが可能になります。これらの句を使いこなすことで、ビジネスレポート作成やデータ分析の初期段階でのデータ準備作業が格段にスムーズになるでしょう。

データの集計とグループ化:GROUP BY句と集計関数

SQLの強力な機能の一つに、データの集計とグループ化があります。SUM(合計)、COUNT(件数)、AVG(平均)、MAX(最大値)、MIN(最小値)といった集計関数を用いることで、大量のデータから統計的な情報を簡単に導き出すことができます。例えば、「全商品の合計売上」を知りたい場合はSELECT SUM(売上) FROM 商品テーブル;と記述します。これらの関数は、特定の列に対して計算を実行し、単一の結果を返します。

さらに、これらの集計関数を特定のカテゴリごとに実行したい場合は、GROUP BY句を使用します。GROUP BY句は、指定した列の値に基づいてデータをグループ化し、各グループに対して集計関数を適用します。例えば、「地域ごとの合計売上」を計算したい場合はSELECT 地域, SUM(売上) FROM 顧客テーブル GROUP BY 地域;となります。これにより、各地域が持つ売上データを個別に集計し、ビジネスにおける地域別の傾向を把握することが容易になります。

グループ化されたデータに対してさらに条件を適用したい場合は、HAVING句を使用します。WHERE句がデータをグループ化する前に個々の行をフィルタリングするのに対し、HAVING句はGROUP BY句によって生成されたグループに対して条件を適用します。例えば、「合計売上が10000円を超える地域のみを表示する」場合はSELECT 地域, SUM(売上) AS 合計売上 FROM 顧客テーブル GROUP BY 地域 HAVING SUM(売上) > 10000;と記述します。GROUP BY句と集計関数、HAVING句を組み合わせることで、複雑な集計分析を効率的に実行し、ビジネスインサイトの抽出につなげることが可能です。

データ連携から集計まで!実践的なSQLクエリ活用事例

複数のテーブルを結合するJOINの基本と種類

リレーショナルデータベースでは、データを複数のテーブルに分割して管理するのが一般的です。これらの分散したデータから有用な情報を得るためには、複数のテーブルを結合(JOIN)する必要があります。JOIN句はFROM句の後に記述し、ON句で結合条件(通常は共通のID列)を指定します。最も一般的に使われるのはINNER JOINで、これは結合条件が両方のテーブルに存在する行のみを返します。例えば、SELECT C.顧客名, O.注文日時 FROM 顧客テーブル C INNER JOIN 注文テーブル O ON C.顧客ID = O.顧客ID;のように使用します。

JOINにはINNER JOIN以外にもいくつかの種類があり、それぞれ異なるデータの結合パターンを提供します。LEFT JOIN(またはLEFT OUTER JOIN)は、FROM句で指定した左側のテーブルの全ての行と、結合条件に一致する右側のテーブルの行を返します。一致する行がない場合は、右側のテーブルの列にはNULL値が入ります。これにより、例えば「全ての顧客とその顧客が行った注文(注文がない顧客も含む)」を取得できます。RIGHT JOINはその逆で、右側のテーブルを基準にします。FULL JOIN(またはFULL OUTER JOIN)は、両方のテーブルの全ての行を返し、一致しない場合はNULL値が入りますが、すべてのデータベースでサポートされているわけではありません。

(架空のケース)例えば、ECサイトの顧客分析で、顧客情報(顧客ID, 顧客名)と購入履歴(注文ID, 顧客ID, 商品名, 数量)を連携させたいとします。顧客テーブルにいるがまだ購入履歴がない顧客もリストアップしたい場合、INNER JOINではなくLEFT JOINを使用することで、すべての顧客情報を網羅しつつ、購入履歴があればその詳細も表示できます。これにより、未購入顧客へのアプローチ戦略を立てるのに役立つデータが得られるでしょう。

重要ポイント
SQLのJOINはデータ連携の要です。INNER JOINは共通部分のみ、LEFT JOINは左側テーブルの全データと右側の一致データ、RIGHT JOINはその逆、FULL JOINは両方の全データをそれぞれ取得します。目的に合わせて適切なJOINを使い分けることが重要です。

サブクエリとWITH句(共通テーブル式)で複雑なクエリを整理する

複雑なデータ分析では、一つのクエリだけでは表現しきれないような多段階の処理が必要となることがあります。このような場合に役立つのがサブクエリ(副問い合わせ)です。サブクエリは、別のクエリの中に埋め込まれたクエリのことで、SELECT句、FROM句、WHERE句など様々な場所で利用できます。例えば、「平均売上を上回る商品だけを抽出したい」場合、まずサブクエリで平均売上を計算し、その結果をメインクエリのWHERE句で使用することができます。

サブクエリは強力ですが、深くネストしすぎると可読性が低下したり、パフォーマンスに影響を与えたりする可能性があります。そこで登場するのが、共通テーブル式(CTE: Common Table Expression)を定義するWITH句です。WITH句を使用すると、一時的な名前付き結果セットを定義し、それを後続のクエリで参照できるようになります。これにより、複雑なクエリを小さな、論理的なブロックに分解し、可読性を大幅に向上させることができます。

(架空のケース)例えば、四半期ごとの売上データを集計し、さらにその四半期売上が前四半期と比較して成長している店舗を特定したい場合を考えます。まずWITH句で四半期ごとの売上を集計する一時テーブルを作成し、次にその一時テーブルを自己結合(SELF JOIN)するなどして前四半期との比較を行うことができます。このように、WITH句を活用することで、多段階の処理を明確に記述し、ステップバイステップでデータ分析を進めることが可能です。

ケーススタディ:マーケティング分析におけるSQL活用

マーケティング分野では、顧客行動の理解やキャンペーン効果の測定にSQLが不可欠です。例えば、顧客セグメンテーションでは、SQLを使って顧客の年齢層、居住地域、購入頻度、購入金額などの属性データを抽出し、特定の条件でグループ分けを行います。SELECT 顧客ID, 平均購入金額 FROM 顧客テーブル GROUP BY 顧客ID HAVING COUNT(注文ID) >= 5 AND AVG(購入金額) > 10000;のようなクエリで、ヘビーユーザー(購入回数5回以上かつ平均購入金額1万円以上)を特定し、VIP向けの特別キャンペーンを企画するなどの施策に繋げられます。

キャンペーン効果の測定では、A/Bテストの結果分析にSQLが活用されます。例えば、異なる広告バナーを提示したグループAとグループBのクリック率や購入コンバージョン率を比較する際、各グループのデータを抽出し、集計関数を用いてそれぞれのパフォーマンス指標を算出します。SELECT キャンペーン名, COUNT(DISTINCT ユーザーID) AS 参加者数, SUM(CASE WHEN 購買フラグ = 1 THEN 1 ELSE 0 END) AS 購買者数 FROM 広告テストログ GROUP BY キャンペーン名;といったクエリで、どのキャンペーンがより効果的だったかを定量的に評価し、次の施策に活かすことができます。

Webサイトのログデータ分析にもSQLが有効です。ユーザーのサイト内での行動パス、特定のページへの到達率、離脱率などを分析することで、UI/UXの改善点を発見できます。例えば、特定の製品ページへのアクセス数や、そこから購入に至ったセッション数を集計し、ボトルネックとなっている箇所を特定することが可能です。これにより、データに基づいたマーケティング戦略の立案と改善サイクルを迅速に回すことができます。

SQLクエリ作成で陥りやすい落とし穴と回避策

パフォーマンス低下を招くクエリの問題点

SQLクエリは、適切に記述しないとデータベースのパフォーマンスを著しく低下させる可能性があります。一般的な落とし穴の一つは「N+1問題」で、これはリスト表示のために各要素ごとに個別のクエリを実行してしまうことです。また、インデックスが適切に設定されていない、または活用されていない状態で大規模なテーブルに対してWHERE句の条件が適用されると、全件スキャンが発生し処理が遅延します。不必要なJOINやSELECT *(全列取得)も、ネットワークトラフィックやメモリ使用量を増やし、パフォーマンスに悪影響を与えることがあります。

これらの問題を回避するためには、まずEXPLAIN(または類似のコマンド、例: EXPLAIN ANALYZE for PostgreSQL, SHOW PROFILE for MySQL)を使ってクエリの実行計画を確認することが重要です。これにより、どの部分で時間がかかっているか、どのインデックスが使われているか(あるいは使われていないか)を具体的に把握できます。次に、WHERE句の条件がインデックスで効率的に絞り込めるように記述されているか、JOINの順序が適切か、本当に必要なカラムだけをSELECTしているかなどを確認し、最適化を図ります。

大規模なデータセットを扱う場合は、集計処理を事前に済ませておくマテリアライズドビューの利用や、データベース側のチューニング(インデックス追加、統計情報更新など)も検討の余地があります。ただし、インデックスの追加やDBの設定変更は、DBA(データベース管理者)や専門知識を持つ担当者との連携が不可欠であり、安易な変更はシステム全体に悪影響を与える可能性がありますので注意が必要です。

データの整合性に関わる注意点

SQLクエリを作成する際には、データの整合性を維持するための注意が必要です。特に、NULL値の扱いは多くの誤解やエラーの元となります。NULLは「値がない」ことを意味し、0や空文字列とは異なります。WHERE句でカラム = NULLのように比較演算子を使うと意図しない結果になるため、カラム IS NULLカラム IS NOT NULLを使用する必要があります。また、NULLを別の値に置き換えたい場合は、COALESCE関数などを活用すると便利です。

データ型不一致も、予期せぬ挙動やエラーの原因となります。例えば、数値型として格納されているはずのデータが文字列型として比較されたり、日付型として処理されるべきデータが文字列として扱われたりすると、正しくフィルタリングや集計ができません。クエリを作成する際は、対象カラムのデータ型を事前に確認し、必要に応じて明示的な型変換(CAST関数など)を行うことで、データの整合性を確保し、期待通りの結果を得ることができます。

データの更新や削除を行うDML(Data Manipulation Language)操作においては、トランザクション管理の基本を理解しておくことが非常に重要です。COMMIT(変更を確定)とROLLBACK(変更を取り消す)を適切に使うことで、誤ってデータを変更・削除してしまった場合に元に戻すことができ、データの損失を防ぐことが可能になります。特に本番環境でデータを操作する際は、必ず事前にバックアップを取得し、開発環境やテスト環境で十分な検証を行ってから実行するよう心がけてください。

SQL方言とベンダー固有機能への対応

SQLはISOによって国際標準化されていますが、実際のデータベース管理システム(RDBMS)であるMySQL、PostgreSQL、Oracle Database、SQL Serverなどでは、それぞれのベンダーが独自の拡張機能や構文(いわゆる「SQL方言」)を持っています。これにより、あるデータベースで動作するクエリが、別のデータベースではエラーになったり、意図しない結果を返したりする可能性があります。これは、特に複数のデータベース環境を扱う場合や、将来的なデータベース移行を考慮する際に重要な注意点となります。

この「方言」問題に対処するためには、まず利用するデータベース環境のバージョンとドキュメントを事前に確認し、標準SQLとベンダー固有の機能の違いを把握することが推奨されます。可能な限り標準SQLの範囲内でクエリを記述するように心がけることで、異なるデータベース間での互換性を高めることができます。例えば、日付計算関数や文字列操作関数などは、データベースによって構文が大きく異なる場合があるため、注意が必要です。

また、特定のベンダー固有の強力な機能(例: OracleのCONNECT BY句、SQL ServerのPIVOT/UNPIVOTなど)を利用する際は、その機能がもたらす利点と、将来的な互換性リスクを比較検討することが重要です。もしベンダー固有機能を使用せざるを得ない場合は、その旨をコメントとしてクエリ内に残したり、ドキュメントに明記したりすることで、後々のメンテナンスや移行時の対応をスムーズにすることができます。利用するデータベース環境の仕様を理解し、適切な対応をとることが、堅牢で保守性の高いSQLクエリ作成には不可欠です。

注意喚起
SQLにはベンダーごとの「方言」が存在します。例えば、MySQLとPostgreSQLでは日付関数や一部のJOIN構文が異なる場合があります。クエリを記述する際は、使用するデータベースの公式ドキュメントを確認し、互換性を意識することが重要です。

【ケース】複雑なデータ結合によるパフォーマンス課題の解決

架空のケース:大規模ECサイトでの顧客分析レポート遅延

ここでは、架空のケースとして、ある大規模ECサイトのデータアナリストが直面したパフォーマンス課題を考えます。アナリストは、顧客の購買行動を詳細に分析するため、顧客テーブル注文テーブル注文詳細テーブル商品マスタ配送履歴テーブルなど、計5つのテーブルをLEFT JOINで結合し、特定の期間のデータを抽出して集計するレポートを作成していました。しかし、データ量の増加に伴い、このレポートの実行時間が数時間かかるようになり、ビジネス意思決定のボトルネックとなっていました。特に、数十万件の顧客データと数百万件の注文データが対象となるため、クエリの実行が完了するまで次の作業に進めないという問題が発生していました。

レポートの内容は「過去1年間の購入履歴がある顧客のうち、特定のカテゴリの商品を3回以上購入し、かつ過去3ヶ月以内に再度購入している顧客リストとその平均購入金額」というもので、複雑な条件設定と多段階の集計処理が必要でした。元々作成されていたクエリは、まずすべてのテーブルを結合してからWHERE句でフィルタリングを行う構造になっており、大量の中間データが生成されていました。また、結合条件にインデックスが適切に活用されていない可能性も指摘されていました。

この遅延は、リアルタイムに近いデータ分析を必要とするマーケティング戦略立案や、在庫最適化の意思決定に大きな影響を与えており、業務効率の低下と機会損失に繋がっていました。この課題を解決し、レポート作成時間を短縮することが急務とされています。

課題解決のためのSQLクエリ改善戦略

上記のパフォーマンス課題を解決するための第一歩は、必要なデータのみに絞り込むことです。元のクエリでは、まず全てのテーブルを結合してからフィルタリングを行っていましたが、これは非常に非効率です。大規模なテーブルをJOINする前に、WHERE句を使って対象期間や顧客属性などで可能な限りデータ量を減らすことが重要です。例えば、「過去1年間」という期間指定があれば、まず注文テーブルから過去1年間のデータだけを抽出し、その結果を他のテーブルとJOINするように変更します。また、SELECT句で必要なカラムだけを指定し、SELECT *は避けるべきです。これにより、ディスクI/Oとネットワーク転送量を削減し、中間テーブルのデータ量を大幅に減らすことができます。

次に重要なのは、インデックスの活用とJOIN順序の最適化です。JOINのON句で指定するカラムには、適切なインデックスが設定されているか確認しましょう。インデックスがない場合、データベースはテーブル全体をスキャンする必要があり、処理時間が大幅に増加します。インデックスが存在しない場合は、DBAに相談して追加を検討してください。また、JOINの順序もパフォーマンスに影響を与えます。一般的には、データ量の少ないテーブルから結合を開始し、徐々にデータ量を増やしていくことで、中間結果セットを小さく保ち、効率的な結合処理を促すことができます。EXPLAINコマンドで実行計画を確認し、最適なJOIN順序を見つけるためのヒントを得ることも有効です。

さらに、WITH句(共通テーブル式)やVIEWの活用、そしてデータベース固有の最適化機能の検討も有効です。WITH句を使って複雑なクエリを複数の小さなブロックに分割することで、各ブロックの処理内容が明確になり、デバッグや最適化が容易になります。頻繁に参照される複雑な結合や集計結果は、VIEWとして定義しておくことで、再利用性と可読性を高めることができます。より高度な対策としては、マテリアライズドビュー(事前に集計結果を物理的に保存しておくVIEW)を導入して、リアルタイム性が要求されないレポートの集計時間を短縮することも可能です。ただし、マテリアライズドビューの導入やパーティショニングなどのDBアーキテクチャの変更は、専門的な知識が必要となるため、データベース管理者やデータエンジニアと密接に連携し、影響範囲を十分に評価した上で実施を検討してください。

出典:職業情報提供サイト「job tag」(厚生労働省), IT・デジタル人材の労働市場に関する研究調査事業 調査報告書(厚生労働省)